眼瞼疾患

眼瞼内反症(逆さ睫毛)

眼瞼内反症とは、逆さ睫毛と呼ばれるものの一部を指します。
まぶたが内向きになる状態で睫毛が眼の表面を刺激する(逆さ睫毛)ことによって、異物感や眩しさ、涙や目やにが出るなどの症状が現れます。角膜の傷が重度の場合は視力低下することもあります。

原因
加齢により眼の周囲の筋肉が緩んだり、皮膚がたるんだりすることが原因となります。生まれつきの場合もあります。
治療
皮膚を切開する方法(切開法)や埋没法などの術式があり、短時間の手術で症状を改善することができます。
入浴も、手術翌日から可能です。

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眼瞼下垂、老人性皮膚弛緩症

眼瞼下垂とは、なんらかの原因で瞼に力が伝わらなくなり、上瞼の開きが悪くなる状態をいいます。
加齢によるものや重症筋無力症などの内科的な原因によるもの、長期にわたるコンタクトレンズの使用によるものなど原因はさまざまです。
筋肉の衰えや皮膚のたるみが生じると、上瞼が下がることによって、黒目の部分を覆うようになり、ものが見えにくくなってきたりします。瞼が黒目にかぶさってくると、ものが見えにくくなるだけでなく、瞼を上げようとおでこや首・肩の緊張が続くことにより、疲労感が強くなったりします。

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先天性眼瞼下垂

生まれつき、片眼または両眼の上まぶたが下がっている状態です。先天性の場合、8割くらいが片眼のみと言われています。
上まぶたが十分に開けられないため、見えにくさをカバーしようとして、おでこの筋肉を使い眉毛を挙げて眼を開けようとしたり、顎を上げて物を見ようとします。
多くの場合には眼の機能に障害はありませんが、上まぶたが黒目を覆っている状態だと視力の発達が妨げられ、弱視の原因となることがあります。

原因
眼瞼挙筋やその筋を動かす動眼神経に障害がある場合に多くみられます。
治療
乳児やこどもの場合、視力が障害される可能性があるときは早期に手術を行います。
それ以外の場合では、成長をみながら手術を検討します。
小児の場合は全身麻酔、成人の場合は局所麻酔でまぶたを上げる筋肉の代わりに人工血管を縫合する特殊な糸を用いた吊り上げ法を行います。吊り上げる量を定量しながらの手術となり、約30分程度で傷は眉毛に埋没されるので目立ちません。

霰粒腫、麦粒腫

まぶたの腫れや腫瘤(しゅりゅう)は、俗に「めばちこ」「ものもらい」「めいぼ」などと呼ばれています。麦粒腫は、感染性で眼瞼の一部が化膿して、腫れたり痛んだりするものです。主に汚れた手指で目を触ることが原因です。麦粒腫は人から人へ移ることはありません。霰粒腫は、非感染性で眼瞼の中に分泌物が溜まり小さな硬い腫瘤(しこり)ができるもので、痛みは伴いません。しかし、化膿すると麦粒腫と同様に腫れたり痛んだりします。

霰粒腫と麦粒腫の治療

化膿して赤く腫れて痛みを伴う場合は、抗菌剤の点眼や眼軟膏による治療が必要です。
症状の激しいときは内服薬(抗生物質、消炎剤など)で炎症を抑えます。痛みが強いようなら、冷やすのも良いでしょう。

膿(うみ)が溜まって腫れが強い場合には、切開して膿を出す必要があります。局所麻酔をしてメスで小さく切開し、膿を出します。発生部位により、結膜側、皮膚側どちらかからの切開になります。皮膚側から切開する場合は縫合をしますので、1週間後に抜糸をする必要があります。傷はほとんど目立ちません。

また、お子様の腫瘤は治りが悪く、傷痕を残すことが少なくないのですが、当院では積極的に切開を行い、早期の治療を目指します。必要に応じて麻酔科医に麻酔をお願いする場合があります。

眼瞼けいれん、片側顔面けいれん

疲れた時や精神的なストレスが重なった時などに、まぶたがピクピクと細かくけいれんすることは多くの人が経験します。通常はぐっすり眠るなどして休めばこうした症状は消えますが、心当たりや自分の意思にも関係無く、まぶたがピクピク動いたり、まばたきが頻繁に起きたりするのが「眼瞼けいれん」です。まぶたを閉じる筋肉(眼輪筋)のけいれんにより突発的に両方の眼をギュッと閉じてしまい、まぶたを思い通りに開閉できなくなる疾患です。

「片側顔面けいれん」や「顔面ミオキミア」などでも、まぶたにけいれんが見られます。
「眼瞼けいれん」は両眼のまぶたが上下とも等しくけいれんしますが、「片側顔面けいれん」では、片側のまぶたに始まって次第に同じ側の額、頬、口、あごなど、他の顔面筋に広がって一緒にけいれんします。「顔面ミオキミア」は左右のどちらかのまぶた(主に下まぶた)の一部がけいれんする疾患です。
結膜炎や角膜炎、異物の侵入、ドライアイ、ヒステリー、チックなどで起こるけいれんとは別物です。

眼瞼けいれんの原因と症状

向精神薬や睡眠導入剤などによる薬物の影響により発症することもありますが、はっきりとした原因はわかっていません。
40~70歳くらいの中高齢者に発症が多く、女性によくみられます。
症状の進行はゆっくりしていますが、そのまま放っておいて自然に治る疾患ではありません。
まばたきが増えたり、異常に眩しさを感じたりすることから始まり、多くの場合は次第にけいれんの回数が増え、指でまぶたを持ち上げないと見にくいといった状態に進行して、日常生活や仕事に大きな支障をきたすことになります。さらにはまぶたが開かなくなり、目が見えない状態にまで進んでしまうこともあります。眩しい光やストレスは、こうした症状を悪化させます。

眼瞼けいれんの治療

当院ではまず、漢方薬の内服で治療をします。それでも効果が無いようなら「ボツリヌス毒素療法」を行います。希釈したボツリヌス毒素をまぶたや口の周囲の皮下に注射して、緊張している筋肉を麻痺させる療法です。治療効果は注射後1カ月頃が最大で、3~6カ月程度は続きます。その後は効果が弱まるため、再度の注射が必要となります。
副作用としては、寝ている時に目が閉じにくくなることや、物が二重に見えることなどがありますが、これらは一時的なものです。全身に対する副作用は無いため、通院治療が可能です。
しかし、現時点で日本におけるこのまぶたの治療法は眼瞼けいれんと片側顔面けいれんには認められていますが、顔面ミオキミアには認められていません。

※ボツリヌス毒素療法およびボトックス治療対象疾患(眼瞼けいれん・片側顔面けいれん・重度の原発性腋窩多汗症)に関する最新情報はグラクソ・スミスクライン株式会社のサイトに紹介されています。
※当院では重度の原発性腋窩(えきか:わきの下)多汗症についても、ボツリヌス毒素療法による治療が行えます。

眼瞼炎

眼瞼炎とは、まぶたに起こる炎症の総称です。炎症を起こす部分や原因はさまざまです。炎症が起こることにより、赤み、痒み、腫れ、ただれ、発疹ができたりなどします。
目の周りの皮膚は非常に薄く、また場所柄、手で触ってしまいさらに炎症を強めることが多いため、早めの治療が必要です。

原因
細菌あるいはウイルスに感染して起こる感染性のものと、薬品、化粧品などの化学物質や動物の毛、植物などにも対してアレルギーなどで起こる非感染性のものがあります。
治療
感染性の場合は原因菌やウイルスに対する抗生物質、抗ウイルス薬、点眼や軟膏を使用し治療します。アレルギーが原因の非感染性の場合は、まず原因と思われる物を除去し、ステロイド眼軟膏を使用します。