涙道疾患

涙道(るいどう)

涙は図のように涙腺から分泌されて、眼の表面を潤したあと、まぶたの鼻側の上下2カ所にある涙点から涙小管~涙嚢~鼻涙管を経て、鼻腔の下方に流れ出ます。この排水経路を涙道と呼びます。

涙道閉塞症

涙道閉塞症とは涙道が詰まり涙の排出ができなくなることを言います。涙がうまく排出されなければ、涙が溢れ出てきたり、目やにが出たり、また涙嚢に膿が溜まることもあります。閉塞部位により涙小管閉塞、鼻涙管閉塞があります。最近、内服の抗がん剤による涙道閉塞が問題になってきています。抗がん剤を内服後しばらくしてから流涙が増えたという患者さんには、早期の治療をお勧めしております。

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涙嚢炎

涙嚢とは、眼から排出された涙が貯留する気管です。涙嚢が何らかの原因で炎症を起きることを涙嚢炎といいます。

慢性涙嚢炎

長期にわたる鼻涙管閉塞や狭窄の結果、涙嚢に細菌感染が加わった事で、炎症が生じます。流涙や眼脂がみられ皮膚の上から涙嚢部を圧迫して涙点から膿あるいは粘液の逆流が確認されます。
慢性涙嚢炎が急性憎悪すると、急性涙嚢炎になります。

急性涙嚢炎

症状は、患部の発赤、腫れ、圧痛、膿の逆流等があり、涙嚢周囲の蜂窩織炎を起こすこともあります。また髄膜炎に発展することもあります。

原因
鼻涙管の閉塞に続発した涙嚢の細菌感染です。
治療
慢性涙嚢炎は涙道へ細い針金を通したりしますが、一時的で根治しにくいものです。そのため涙嚢鼻腔吻合術を行う場合もあります。
急性涙嚢炎の場合は、痛みを取るために腫れている部分を穿刺し、排膿することで減圧をし、抗菌薬の全身および局所投与にて消炎させます。
再発が多い場合には炎症を落ち着かせてから、涙嚢鼻腔吻合術を行うこともあります。

先天性涙道閉塞症

涙道とは涙液を結膜嚢から鼻腔へ導く排水管の部分ですが、その入り口である涙点から鼻腔の出口である鼻涙管が開口せずに閉鎖したままの状態です。

出生直後からの流涙、目やにの症状があります。さらに感染を伴うと膿性の目やにや腫れ、皮膚炎を起こす先天涙嚢炎になる事もあります。生後12カ月頃までは成長に伴って自然に開口することが多いので基本的に経過観察が勧められます。

検査
検査では細い金属製のストロー状のものを使用して涙道から水(生理食塩水)を流し、注入した水が喉の奥に流れるかの処置を行い、流れていれば喉の奥に流れてくるので開通の確認が取れますが、逆流や膿排出がみられる場合鼻涙管閉塞が疑われます。
治療
新生児の場合は涙嚢部のマッサージで経過観察します。マッサージは目頭と鼻の付け根の間(涙嚢部)を揉むように行い、目やにが多い場合は抗菌薬の点眼薬を追加します。首がすわる時期から1歳になる間に症状の改善が認められなければ、バンガーダ式ブジーという通水しながら閉鎖した部位を開口させる手術をします。手術は処置室で体が動かないようにタオルで全身を巻いた状態で行います。

涙腺炎

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涙腺炎は瞼の裏側、耳の上側にある涙腺炎症を起こす状態です。
急性と慢性があり、急性は、細菌やウイルスの感染により起こります。
慢性はサルコイドーシス、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患が主な原因で生じます。

症状
涙が出にくくなります。
・急性…多くは片側に発症し、赤く腫れ、指で押すと痛みが増します。
・慢性…両側が腫れます。
検査
・シルマー試験(涙の分泌量の検査)
・フルオレセイン試験(角膜炎症所見)
腫瘍がある場合は切開やCT,MRIなどの画像診断を行う場合もあります。
また自己免疫疾患が疑われる場合、病気の一部を取り、顕微鏡で観察する診断(病理組織診断)を行います。
治療
・ステロイドを内服します。
・抗生剤の点滴を行います。
・涙が少なければ点眼薬、腫れには眼軟膏を使用します。

眼窩底骨折

スポーツ、転倒、交通事故などで眼窩部を打撲した際に起こります。
眼窩の骨は打撲で折れやすく、折れた箇所に外眼筋と脂肪がはさまり、複視(1つのものが2重にみえること)や眼球運動痛、眼球陥凹(眼球が奥に引っ込んだ状態)、頬や唇に痺れを生じる疾患です。
放置することで、その症状が固定してしまうことがあり、整復術が必要になります。

下壁(底)の手術は自分の骨をなるべく再利用し、眼窩内に異物を留置しない方針です。
バルーン法の場合は、上顎洞に挿入したバルーンで骨片を支持し、約1週間固定後に抜去します。
眼を打撲しやすいスポーツ選手に適しております。内壁の手術も同様に自分の骨をなるべく再利用する方針です。
骨片が粉砕している場合には吸収性プレートなどを使用しております。

外傷性視神経症

怪我による骨折で視神経管が狭くなった事が原因で、その中の視神経が圧迫や血流が障害されることによって視力や視野の障害が起こります。
受傷直後から下記のような症状がみられますが、眼底所見では受傷直後は正常であることが多く、10日ほどすると視神経の循環障害によって視神経委縮がみられることがあります。

  • 眉毛の外側からおでこにかけての怪我が原因になりやすい

    • 怪我による骨折が視神経を圧迫する
    • 怪我によって血腫(血の塊)ができて、視神経を圧迫する
    • 怪我の衝撃によって視神経線維の血管原性浮腫(神経線維がむくむ)や循環が悪くなる
症状
・眉毛の部分の打撲傷(打ち身)
・急激な視力低下
・視野障害(中心が暗くみえるや上半分または下半分が見えないといった障害が生じることが多い)
治療

​​骨折している場合
・手術で視神経が通る管を広げる 視神経管開放手術

​​骨折していない場合
・視神経線維のむくみを軽減させる
・浸透圧利尿薬の点滴:全身の水分を減らす
・ステロイド薬の点滴:炎症を抑える
・視神経の保護 ビタミンB12製剤(メチコバールなど)

外傷性涙道損傷

涙道は、涙点・涙小管・涙嚢・鼻涙管からなっています。これらの経路が、外傷などで損傷を受けた状態を涙道損傷と言います。
主として、涙小管と鼻涙管で生じます。涙小管断裂は、交通事故で目頭を深く切ったときに発生しています。
再建し、管内へシリコン製のチューブを挿入して管の癒着や狭窄の防止をはかります。初期治療での管の再建が大切です。

鼻涙管損傷は鼻涙管が通る上顎骨の骨折により発症します。上顎骨を適切に整復すれば管も再開通しますが、不適切な整復では閉塞したままとなり、その場合、涙嚢から鼻腔へ直接涙が排出する経路を設ける、涙嚢鼻腔吻合術が行われます。